高速道路のサービスエリア(SA)とパーキングエリア(PA)は莫大な収益性を持っているにもかかわらず、借金の返済にまったく貢献していない。道路公団民営化以前と同じく、道路役人のパラダイスを維持する道具なのである。まずは、SA・PAの収益性をイメージするために、家族や知人と週末ドライブに行くことを想定してみよう。
普通乗用車に4人乗車し、行き先は那須。
高速代は、浦和から那須までのETC休日割で2990円。距離は147キロメートル、休憩せず時速100キロで走り続けても1時間半かかる。
ほとんどのグループは、少なくとも1回、SAかPAで休憩するはずだ。そこでドリンクと出店のジャンクフードを買ったら、ひとりあたり500円、4人で2000円である。2回休憩する人もいるし、食事をしたらもっとお金を落とすことになる。
ここでは、4人で2000円に止めておこう。高速代の2990円に比較すると、高速代の3に対し2の割合いとなる。もちろん、休憩しない人もいるし、ひとりで通行するドライバーもいる。逆に、50人以上を載せたバスもあり、4人で2000円という例は、あくまでひとつのケースに過ぎない。
さて、ここで民営化後の料金収入とSA・PAの収益を表を参照してほしい。
↑1997-1998年の料金収入は首都高・阪神高速・本四国を含まず
SA・PAの収益を示すオレンジ色の棒グラフがほとんどゴミのように見えるはずだ。
もちろん、SA・PAの売上げは、テナントの収入であり、表に示されているのはテナントが支払う賃貸料の類に過ぎない。それにしても額が少なすぎる。なぜ、これっぽっちの収益にしかならないのか、その理由を考えてみよう。
道路公団時代にさかのぼると、お金を稼ぐレストランと売店は、国土交通省の外郭団体が建物を建設・保有していた。公の土地に多少の投資をして、安い占用料で恒久的かつ独占的に利権をむさぼっているのである。この手法は、建設省から国土交通省に受け継がれた常套手段である。高速道路のみならず、港湾や公営駐車場や空港など、さまざまな場所で同じことをしている。
SA・PAの大きな問題は、道路公団民営化の際に、レストランと売店が建っている土地を公団の後に高速道路を保有する機構ではなく、運営会社のものにしてしまったことである。
ついでに書けば、その評価に収益性は勘案されておらず、取得原価を対価として所有権が移転されている。これは国と地方のすべての官庁が同じようなことをしている。収益性を勘案しないことによって、外郭団体に事実上の利益供与が可能となるのである。
道路官僚に本気で借金を返す気があったとしたら、SA・PAの権利関係はあり得ない。国鉄を民営化するときに、駅ビルを外郭団体の保有にするようなものである。
最新のサービスエリアは、ショッピングモールに匹敵する集客力が存在するのだから、民営化の時点で行なうべきは、レストランと売店を取得原価で買い取って、SA/PAの収益を料金収入に次ぐ収益源とすることであった。